「ゴルゴタ」深見真
📕本書との出会い
僕は元書店です。
文庫が好きだったので文庫班に配属されるように画策して、毎日文庫に触れて過ごしていました。
本好きにとって書店員は最高ですよヾ(≧▽≦)ノ
プライベートのお買い物で書店に1、2時間本を選ぶことは本好きあるあるですが、仕事中に本を選ぶことができるのですからそれはもう🤤
背表紙を読んでも業務のうちですし、ポップを描く名目で作者のプロフィールを調べるのも業務中です。
そんなわけで本書とは陳列中の勉強(背表紙の立ち読み)で出会いました!
本書は2010年に発売されましたが、重版し続けて、赤字が目立つ帯で「手加減一切なし!」と大きく書かれているものが未だに売れ続けている本です。
そこには国家VSたった独りの日本人ともあることから、僕は勝手にリーガルミステリーを想像していました。
章の始めには聖書の言葉が引用されていて、タイトルとも併せて厳かな雰囲気を醸し出しています。
第1章の言葉は《剣で殺されるべき者は、剣で殺される》 新約聖書「ヨハネの黙示録」でした。
殺すだの剣だの穏やかじゃないですね。
でも物語も穏やかじゃありませんでした。
📘あらすじ
主人公は最強と謳われた陸上自衛官の真田聖人です。
彼の妻は突然凌辱されたうえ、惨殺されます。
妊娠6カ月のお子様もお腹の中にいました。
加害者は少年たちです。下った判決は無罪にも等しい保護観察処分でした。
流石に今の日本でこの判決は有り得ないはずだ、と信じたいものの、加害少年には教育が必要という風潮にあるのも確かです。
本書で描かれるこの国の法は真田の味方ではありませんでした。
真田は怒り狂います。そして復讐を誓います。
真田は一度世間から姿を消しますが、それは戦争で使う規模の武器を調達するためでした。
彼の怒りがあらわになったとき、残酷な殺戮が始まります。
📗見どころ
まず、本書を読んだ他の人の感想ですが、《正義とは何か、考えさせられた》《男に共感して応援したくなった》《武器の描写が多すぎてうんざりした》などがありました。
僕が感じたのは、真田の正義は違うのだろうが、少年たちを無罪放免も違うだろうということ。
あと武器の正確な描写は本書には必要だったということでした。
真田の正義は暴走し、事件とは直接は関係無い法曹界や警察にまで銃を向けます。
罪のない警官たちが何人も、、、
そうなると真田の正義は狂った日本をぶっ壊すみたいになってしまい、単なるテロリストみたくなってしまいますね。
彼らを殺す以外の復讐は考えられないものかと、とても残念でした。
正義とは何かは永遠のテーマでしょうが、真田の正義が間違っているのは事実でしょう。
本書を流石に警察小説とはできないものの、真田を犯人役として描くこともできたはずです。
しかし、著者は真田を主人公に選びました。
ならば、共感を得られるよう、警察を敵に書かないといけません。
その辺りの描写は本当にお見事でした。
復讐の動機、殺戮できる実力、そして警察には扱えない武器が魅力の一冊です。
警察の装備でジェラルミンの盾があるのを知っていましたが、それを貫く武器があるのを本書で初めて知りました。
武器の描写のページ数が多いのも警察との差別化を図るのに必要だったのでしょう。
あとは真田の決意の硬さの表れかもしれません。
武器の正確な描写は動機の強さです。
現実でも小さいナイフでは殺意がが弱いと捉えられることがあります。
不覚にも多数の警官隊対真田のシーンでは真田を応援していました。
著者の術中にはまりましたね。でも彼はテロリスト。共感しては危険です。
📙最後に
主人公について一言で書いてしまうのならば、家族に直接手をかけたもの以外を殺すなよ!
ですが、暴れる前の心理描写も丁寧に描かれており、憎めない主人公になっています。
僕は結構このようなドンパチがある小説が好きなのかもしれません。
でも僕は危険人物ではないと思うので、警戒しないようお願いいたします。
きっと危険人物ではないはずです。きっとね。ふふふふふ。
コメント