適当でいいのかも「イン・ザ・プール」奥田英朗

小説

「イン・ザ・プール」奥田英朗


📕本書との出会い

僕には一時期カウンセラーになろうと本気で勉強していた時期があります。

渋谷のカウンセラー養成学校に通っていました。

途中で「カウンセラーとは生き方のことで職業のことではない!」と考え、方向転換をしましたが心理学の興味は残り続けています。

(かっこいいことを言いたかっただけで実際には色んな理由がありました💦)


ドラマで本作と出会い、小説を読むようになりました。

他に、舞台化、映画化、アニメ化もしているので世間からは高い認知があることと思います。

精神科医やカウンセリングへの興味というよりかは主人公のキャラがよすぎたのでしょうね(^_-)-☆


📘あらすじ

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。

色白で太ったその精神科医の名は、伊良部一郎。

そしてそこで待ち受ける前代未聞の体験。

プール依存症、陰茎強直症、妄想癖……訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。

こいつは利口か、馬鹿か? 名医か、ヤブ医者か?

本書では5つのエピソードが収録されており、シリーズは4作出ています。
(最近17年ぶりにシリーズ4作目が発表されました)

本書の主人公は神経科の医師・伊良部一郎です。

カウンセラーとは違い医師免許を持っているからそれだけで何年も勉強されたことが分かります。

医師というだけで権威と実力がありそうに思えますが、伊良部は本当の変態でした。

特に患者に意味のない注射をするのが趣味というのは訴えられたら負けることでしょう( ´艸`)


📗見どころ

本書で「コンパニオン」というエピソードが感動的でしたので紹介いたします!

患者は24歳の女性で、職業はタレント兼モデルの広美です。

ストーカーに追われていて不眠症になってしまったのでお薬をくださいと、伊良部の元を訪ねてきました。

伊良部は意味のない注射のあと、自身がボディーガードを買って出ます。

ボディーガードをしているうちにテレビに出たくなった伊良部は俳優のオーディションを受けまくるなどの暴走をし続けます。

オーディション会場で暴れる伊良部を見て、次第に広美の症状は無くなりました。

広美は仕事で結果が出せないストレスを、ストーカーのせいで仕事が上手くいかないとしたかったのでしょう。

実際にはストーカーはおらず、被害妄想でした。

しかし、伊良部の滑稽な姿を見て芸能界から足を洗うことにしました。

「最初わたしが訴えたとき、先生、信じていたんですか」

「一目で被害妄想だとわかったよ。でもさ、そういう病って否定しても始まらないからね。肯定してあげるところから治療はスタートするわけ。眠れない人に眠れって言っても無理でしょ。眠れないなら起きてればいいって言えば、患者はリラックスするじゃない。結果として眠れる。それと一緒」

伊良部の本気で俳優を目指すという突飛な行動も患者のためだったのかもしれません。

しかし、本気なようにも見えるから患者は次第に自分のことより伊良部のことを心配になり症状が緩和されていくのでしょうか。

そう考えると伊良部のすごさは演技力かそれとも無邪気過ぎるほどの素直さな気がします。


📙最後に

伊良部は下手に明るいし、カウンセリングはしないし、バカなことばかりするし、彼は名医なのかヤブ医者なのか最後まで分かりませんでした。

しかし、僕は伊良部先生は患者に真摯に向き合っていると感じました。

例えば、ガスを止め忘れたかもしれないと不安になってしまう患者には部屋の中にカメラを付けることで安心させます。

水泳中毒の患者とは一緒に泳ぎますヾ(≧▽≦)ノパシャパシャ

自分のことのように、もしくは実際に自分のことにしてしまい、患者が不安に思うことを可視化させるのです。

その手法にはお見事です。先生!とついうなってしまいます。

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