「母さんごめん、もう無理だ」 朝日新聞社会部
📕はじめに
僕は読み物で一番大事なのはリアリティだと思っています。
最近は日常会話でも「リアリティあるね」などと言ってしまい反省しているくらいです(;^_^A
僕の中で「リアリティ問題」と名付けていますが、読書やドラマでたまに邪魔します。
ほんの僅かな違和感があったら読み進められなくなってしまうのです。
リアリティとは現実に則したものでなくてはならない訳ではなく、SFだったらタイムスリップはあるかもと思えればいいし、ホラーだったら幽霊と出会った時この登場人物のような反応をするかもしれないなと思えればいいのだと思います。
とにかく作者の頭の中を文として見させてくださいという感じです。
マンガにもリアリティを求めてしまう部分があって苦しんでいますし、段々と日常生活にも影響を及ぼしていて、、、
おっと、このことだけで2000字くらいは書いてしまいそうなので、そろそろ本題へいきます。
本書の著者は記者さんでこの本は裁判の傍聴録です。
事実しか載っていないので、究極にリアリティを感じることができました。
つい、涙です( ;∀;)オロロロ
📘あらすじ
「100歳まで頑張る」と話していた98歳の母の首に、74歳の息子が手をかけた――。
これが自分だったら、一線を越えずにいられただろうか?記者が見つめた法廷の人間ドラマ29編。朝日新聞デジタルの人気連載、ついに書籍化!
生涯の愛を誓った夫の浮気を知って。老老介護の果てに。思い通りにいかぬ育児に悩んで…。
裁判所の傍聴席で日々取材をする記者が、強く心に残った事件の裁判の模様を綴る、朝日新聞デジタルの連載「きょうも傍聴席にいます」。
「泣けた」「他人事ではない」と毎回多くの反響が寄せられる人気連載が待望の書籍化。
連載開始の2013年5月から2015年末までに掲載された全29編を収録しました。
法廷は人生と世相の縮図。一線を越えてしまった人たちの、生(なま)の言葉と息づかいが、深く心を揺さぶります。
Amazonという広大なジャングルから本書の紹介文を拾いました。
文中には記者さんの一切の主観を入れず、取材の中で聞いたこと、裁判中の発言が余すことなく載せています。
本書では裁判員の法廷での発言や被告への励ましの言葉まで載っていることが印象的でした。
裁判とは決して無機質なものではなく、判決だけではなく、裁判の内容によって救われた方もいるんだろうなと感じることができました。
📗見どころ
本書で取り扱っている事件を2つほど紹介いたします。
①「まじめな医師のもう一つの心」では一見エリートに見える人生を歩んでいた研修医は放火の常習犯でした。
被告は大学病院の一室を放火した罪で捕まりましたが、逮捕される7年前から放火や脅迫など、罪を重ねていました。
この裁判の中では被告の生まれ、どんな勉強をしてきたか、大学生活の様子、初めての放火などが明らかになった上でさらに深いところまで聞いています。
弁護人「判断力のある医師がなぜなのか。私自身、これほど理解に苦しむ事件は少ない」
裁判長「あなたがなぜ?というところが、腑に落ちないんですよ」
と裁判長だけでなく、弁護士まで一緒になって事件を解明しようとしています。
裁判長や検察が考えた、もしくは作家が放火魔はこんな動機で犯罪を犯すんだろうなというものではなく一人の被告に対して真剣に向き合い、真相を明らかにしようとする人たちの姿が本書に描かれていました。
このあと精神科医の分析や栽培員による会議や励ましを経て、懲役6年で刑が確定しました。
②「妻と娘を守る義務がある」では息子殺しの父親に執行猶予付きの判決が出ました。
三男の息子は高校2年生のとき精神の障害と診断されました。
その後、通信制高校を卒業、浪人生活を経て大学に進学、卒業後はガス会社に就職しています。
しかし、次第に変化が生じます。
「自分をコントロールできない」と悩む三男は仕事がうまくいかず、職を転々とします。
家族への言動が荒くなり、母を蹴り、肋骨を骨折させるなど家庭内暴力が始まりました。
両親は警察に相談するも、医療機関を頼って欲しいと追い返され、病院では警察が主導でないと入院させることはできないとたらい回しにされます。
事件の日は特に家庭内暴力がひどく、110番に通報するも警察はすぐに帰ってしまいます。
三男は「今度は刃物を使うから覚悟しろよ」と凄みます。
ちなみに三男が怒った理由は母が洗濯しなくてよいものを洗濯したから、でした。
家族の危機を感じた父親は寝静まっている三男を刺し殺しました。
裁判では事件の日の状況から、三男との生活や思いを聞いています。
以下は被告となった父親の言葉です。
つい、記事を書きながら涙です( ;∀;)オロロロロ
三男は鉄人28号の模型を自分のために作ってくれた。大学受験のときには一緒に勉強し、合格通知を受けっ取った三男は「お父さん、ありがとう」と言った。
(三男は)友達のような存在でした。三男にとっても、私が一番の話し相手だったと思います。
妻からの証言もあり、この事件では情状酌量が認められて懲役3年、執行猶予5年の判決になりました。裁判長は判決の際に、被告に次のように伝えています。
家族を守ろうとしていたあなたが、最終的には家族に最も迷惑をかけることをした。これからは、もっと家族に相談するよう、自分の考えを変えるようにしてください
父親は三男と幼いときは仲が良く、心中ことも考えるほど悩んでいました。
そのことも把握したうえでの裁判長の言葉はあまりに重いものがありました。
📙最後に
今回は紹介しませんでしたが、本書のタイトルにもなっている「母さんごめん、もう無理だ」では老々介護の末、98歳の母を74歳の息子が手をかけた事件を描いています。
年金だけでは生活できず、他の家族にも相談できなかった末の結末でした。
「36年前の夫の裏切りが許せず」も夫の介護に悩む妻が起こした事件です。
夫の36年前の不倫が動機のひとつとして認定されました。
浮気したことある方、浮気している方は本書を読んで今のパートナーを大事にしてください(^_-)-☆
今回は長くなってしまいましたが、僕はリアリティを大事にしてるんだなって伝わったら幸いです。
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