目には目を、歯には歯を「ジャッジメント」小林由香

小説

「ジャッジメント」小林由香


📕本書との出会い

目には目を歯には歯を、とはよく聞く言葉ですね。

その考え方は「やられたらやり返す、倍返しだ!」とは対極をなすものです。

目をくり抜かれたのなら、そいつの目をくり抜きましょう。

歯を取られたのなら、そいつの歯を取ってやりましょう。

聖書やハンムラビ法典から生まれた言葉ですが、なかなかに物騒な言葉です。

しかし決して復讐を推奨する言葉ではありません。

本来の意味では相手の歯を折ってしまった罪には自らの歯で謝ろうね。

というものです。あとは行き過ぎた復讐を抑制するための言葉だったみたいです。

半沢直樹はまったくもってもう……。

本書では20XXの日本で新しい法律ができた世界を描いています。

この法律は必要なのでしょうかね。ずっと考えてしまいました。


📘あらすじ

大切な人を殺された者は言う。「犯罪者に復讐してやりたい」と。

凶悪な事件が起きると人々は言う。「被害者と同じ目に合わせてやりたい」と。

凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、治安の維持と公平性を重視した新しい法律が生まれた。

それが『復讐法』だ。大切な人が殺された時、あなたは復讐法を選びますか?

これは冒頭からです。

復讐法を使える人は裁判で認められた人だけです。

そして執行は犯罪者から受けた被害内容と同じことを加害者にできます。

本書は5章でなっていて、語り手は応報監察官の鳥谷文乃です。

鳥谷は復讐人が認められた行為以外を禁ずるために取り締まります。

現行法で言うところの死刑執行官みたいなものでしょうか。

監察官の存在もドラマになりそうです。


📗見どころ

第1話から過激です。

事件はリンチ殺人です。

16歳の少年が19歳の4人の少年に拉致され激しい暴行を受けたあと殺されました。

殺害動機は、親父狩りの現場を目撃され、注意されたことに腹を立てたらしいです。

犯人たちのうち、主犯格は禁固15年もしくは復讐法を受け、1人は実刑、2人は少年院に送致です。


主犯格以外の判決は軽すぎますね。

また、あり得る事件のあり得る動機でリアリティがありますね(;^_^A

被害者の父親が復讐執行人として選ばれて、父親は復讐を選びます。

被害者の父親は加害者に対して、被害者が受けた分の復讐を法律で認められます。

それは最後までいくと死刑になります(;^_^Aオダヤカジャナイ

しかし、加害少年にも母親がいます。

国が死刑を決めたのなら我が子を救うのは難しいですが、復讐法ならば、父親を説得できれば我が子が死ぬのを防ぐことができます。

加害母は被害父を説得して復讐をやめさせようとしますが、はたして。


被害少年の父がくだす判決はいかなるものであっても僕には何も言えないです。

正直言って復讐をした人は褒めることは絶対にできないですし、なんか嫌です。

ただ、法で決められている以上、選択した人は悪くありません。

しっかり考えて決断したことでしょう。

改めて、毎日人の将来に関わる裁判官さんには感謝です。僕には絶対にできない仕事です。


📙最後に

他の話には、祖母殺しの娘が被告、復讐人は母親という話や通り魔への復讐の話では心神耗弱による無罪判決が出た被告にも復讐法が適用されています。

無罪になった人にも復讐法が適用されるのは障碍者団体から激しく抵抗されることでしょう。

これには精神科医の正確さも関わるので扱うテーマが大きすぎてページ数が足りない気がしました。

あとはネグレクトの両親にその子どもからの復讐の話もあります。

絶対に明るい気分にならないことは間違いなしですが、重いテーマを扱うだけの筆力が小林由香さんにはありました。

こんな法律ができないような、凶悪犯罪が起きない社会が1番なんですけどね(^_-)

📙最後に②

最近(2025年3月)、配信者さんが路上で生配信をしている最中に刺されて亡くなってしまう痛ましい事件が起きました。

被害者の配信者さんは加害者からお金を借りていましたが、返さなかったこと、精神的苦痛を与えてしまったことが動機になってしまいました。

当事者間でしかわからないことが多い中、世間では加害者を擁護する声も大きい事件でした。

やれ「被害者に落ち度がある」だの、「刺されて当然」だの( ;∀;)

加害男性が受けた苦痛に心を寄せることはよいにしろ、何も殺すことはないだろ、被害女性は何も死ななければならないようなことはしていないだろうと強く思うのです。


とてもひどいですね。「目には目を、歯には歯を」です。

行き過ぎた復讐は良くないです。

法律で解決してほしかったなあと切に感じる事件でした。

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