今回は怖い話をします。

小説

📕はじめに

どんな仕事だよってツッコミが入るかもしれませんが、僕はときどき子どもに怖い話をしていました。

子どもは怖い話が好きです。僕もそうでした。

一度大泣きされて教頭先生にめっちゃ怒られたことがありましたが( ;∀;)キョウトウコワイ

怖い話をするときはこの話をします。


📘N君に黙祷

これは僕の父が50年くらい前に小学校で経験した話なんだけどさ。

当時は子どもが多くて、父さんは一学年で8クラスぐらいある学校にいたのさ。

でも父さんの通う学区では子どもの数が多いのに交通整備があまりされていなくて毎年のように事故で亡くなってしまう子がいたのさ。

で、父さんが小4のとき、クラスメートのN君が事故で亡くなってしまったんだって。

担任の先生は1時間目をつぶして語るのさ。

まずは黙祷して、次に黒板に大きく事故があった交差点の絵を描き危険なところを教えてくれたの。

いつもは賑やかなクラスでもすごい真剣に先生の話を聞いているんだよね。

先生の話は「交差点では、くれぐれも気をつけるように」で、ひととおり終わるんだけど、しばらく無言でクラス一人ひとりの顔を見回してはさらにN君の話を続けたんだ。


📗野球遊び

当時の遊びって今みたいにスマホも無ければゲームもないのよ。

遊びと言えば野球!とは言っても今野球クラブで練習してるのとは全然違う感じかもね。

みんなグローブ無しでバットは一本ね。
ただ投げて、打って、走って、それを交代しながら繰り返すのさ。

N君は足も速いし自分でお金を貯めて買った木製バットもあったから野球遊びの中心人物な存在だったんだよね。

その日もN君は家に着くなりバットを持って自転車を飛ばしてグラウンドに集合。

そんでいつものようにみんなで野球をやってたんだって。

5時になってみんな帰る時間ね。

使ったボールは最後にキャッチャーをやってた子が持って帰るって決まりにしてたから、キャッチャーの子だけグラウンドの見回りして、他の子は解散したのさ。

そのとき見回りしてた子はいつもと違うことに気づいたの。

それはN君がバットを置いて帰ってしまっていたこと。

とっても大切にしてたから、忘れるなんて今までなかったのにおかしいなって。

急いで追いかけたら、N君の背中が見えたんだ。で、大声で呼びかけたんだって。

「バット忘れてるぞー!」

そうしたらN君は振り返って「もう使わないから」って言ってそのまま走り去っちゃったんだって。

その直後にN君は事故にあったと、先生は淡々と話してくれたってさ。

先生は嘘をつくような人じゃないしそんな場面で冗談も言えないよね。

人は死ぬ直前で自分の運命を知ってしまうんだろうか。

突然に、時期が来たことを悟るのか。

それとも、何者かがそのことを告げに来るのか。

父さんはいまでも「死」そのものよりも、「何者」かがそれを告げに来ることの方が怖いんだって。

これで、話を終わりにします。今日はもうおやすみ。

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📙おわりに

いかがでしたでしょうか。こんなところです。

参考書籍は阿刀田高さん選の「奇妙にとっても怖い話」です。

そうです。父の体験談とは嘘でございます。

リアリティを出すためには必要な演出だったのです。

もちろん最後には父の話じゃないことを言いますけど。

ちなみに父から授かった怖い話では墓を漁り骨を食べる老婆の話が一番怖かったです。

本書は怖い話の体験談が40編集まったものです。

この中で僕が一番怖いと思った、この話を子どもたちにしてもあまり怖がってくれません。

どこかでお前だ!ってやれば怖がってくれるかもですが、それはしたくないのです。

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「奇妙にとってもこわい話」阿刀田高 選

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