!!注意!!
胸糞悪い話が続きます。
途中まで読み気分が悪くなった方はいきものカテゴリーの記事で癒されてくださいヾ(≧▽≦)ノ
本書は新潮社で発売されたノンフィクションの単行本の文庫版だ。
単行本を出してから四年後に文庫を出しているため、単行本を犯人が読むシーンが追加されている。
新潮社で単行本が出版されたものの、角川文庫から出版されている。
文庫化にあたり、新潮社側から反対の声が大きかったのだ。
それだけに強烈で読むのが辛くなるような描写が多く含まれている。
描かれていることは事実のみなのだが。
筆者からしてみれば反対されるのはたまったもんじゃないだろう。
決して犯人の利益に繋がるものではないし、体まで壊した著者の行動が報われなくなる。
あとがきにも編集者との衝突が書かれている
センセーショナルな事件で発表されただけで傷つくような人が多くいる。
出版社側も慎重にならざるを得なかったのだろう。
事件の現場は千葉県の市川だ。
これは1992年に起きた。
犯人は五人家族を襲い、女子高生を除いた四人を殺害している。
本書を読んでいる時は吐き気が止まらずでなかなか読み進まなかった。
犯人は幼い頃に父親から暴力を受けていたこともあり、力が強い奴が偉いという価値観を持っていた。
そんな犯人が恐れるのはヤクザだけだった。
ヤクザが力の象徴だったのだろう。
この凶行はヤクザに200万円払えと脅されてのことだった。
犯行の内容はあまりに酷いので、詳しくは書けない。
本書の半ばまでは犯人の育ちや犯行をていねいに主観を交えずに描いている。
男の父親は屑だった。
遊び、家族を殴るような父親だった。
借金は億単位にまでのぼり、毎日のようにヤクザが取り立てにきて、怯えながら過ごす日々だった。
母親は管理が厳しかった。
遊ぶな!あの子とは付き合うな!など。
両親が離婚し、母親と暮らすことになった。
男は中学生になると体がぐんと大きくなり、体力も腕力も同じ世代の少年を圧倒した。
地元の不良たちの仲間になり喧嘩やカツアゲを繰り返した。
母とも主従関係が逆転し、土下座までさせている。
その後高校を中退し、非行はエスカレートしていく。
女遊びもしており、フィリピンパブのキャストと結婚している。
一人暮らしも始めたが、胸の底にはいつも煮えたぎる思いがあった。
だんだんと父親に似ていく自分に苛立つようになった。
仲間から教わったということもあり、レイプをするようになった。
手にかけた被害者から身分証や生徒手帳や奪うことで警察への告げ口を封じた。
しかし、ヤクザの前で男は無力だった。
「おまえのやったこと(フィリピンのキャストに手を出したこと)は誘拐だ。女がこのままフィリピンへ帰ったら、店の損害は200万円になる。どうしてくれるんだ。」
震えあがった男は200万円持っていくとヤクザに約束をする。
そしてさらに暴走する。
本書の事件は金目的の強盗殺人だった。
後半は裁判と死刑が決まったあとの男とのやりとりだ。
著者は男と文通や面会を通して交流を図っている。
犯人とのやりとりの最中とても衝撃を受けた一文があった。
犯人が単行本を読んで内容が違うと怒り出すシーンがある。
「この本には嘘が書かれている!」と男は怒る。
それは男がフィリピンに行った際に暴れ、警官に拳銃を突き付けられる描写だった。
男いわく、警官は俺から金をせびろうとしていた。
だから腕で払ったら拳銃を突き付けてきたんだ。
あと、この部分で弁護士に怒られたとのことだった。
ちなみにこの件は死刑判決に関係がない。
男は見栄を張る傾向が強かったのだ。
著者は諭すように言う。
「拳銃云々は些末なことだ。あの本にはあなたに殺された被害者の遺族の悲しみとか怒りがいっぱい詰まっていたでしょう。あなたはそれについてどう感じたのか、まず語らなければならない。それが筋だ。そうは思いませんか。」
続けて著者の感想があった。
愛する娘と四歳の孫を刺し殺された祖母の地獄の日々に思いを馳せることができないこいつは、やっぱり救いようのないクズだ。
この一文を読んで鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
ここまで読んできて著者は犯人のことを理解したいのかと思っていた。
しかし、他に〈理解不能〉とも書いている。
この突き放し方は筆者としてはしてはいけないことではないかと思ってしまった。
単行本を出してからも著者と犯人とのやりとりは続く。
犯人の最後まで見て伝えたいという著者の思いは本物だったのだろう。
著者は極度のストレスから駅で倒れてしまい、三週間の入院を余儀なくされる。
自律神経失調症だった。
その後に面会はできなくなり、この作品は未完成として終える。
ノンフィクションゆえの結末に心がもやもやしてこの本のことだけを何日も考えることになった。
この本を読んで以降、筆者が執筆する動機を考えるようになった。
著者がしたいことを知った方がより自分の中に落ちるからだ。
📙あとがき
普段とは違う書き方をしてみました(^_-)-☆
僕はリアリティのある作品が好きで論理的に推理するミステリー小説に惹かれがちです。
本書の存在は書店員になったことから知っていましたが、怖すぎてなかなか手に取れなかったです。
しかし、ノンフィクション作品こそ究極のリアリティだなと思い、読んでみました。
そして、感情を大きく揺さぶる1冊になりました。
この先何度も書くことになるかと思いますが、感情を揺さぶる本は名著です。
この本と出合いましたらまずは解説やあとがきを読んでみてください。
それだけで震えます(;^_^Aアワアワ
📙まだまだ続く長いあとがき
著者の永瀬さんは「デッドウォーター」という小説も書いており、この事件の犯人と似た人物を登場させ、対決しています。
きっとこの犯人を許せない気持ちと未完で終えてしまった罪悪感があったのかと思います。
そちらも名作なのでいつか紹介します!
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